串に団子状に刺され、醤油味に炒り煮された”玉こんにゃく”は、山形県の郷土料理です。
「閑さや(しずかさや) 岩にしみ入る 蝉の声」という俳人・松尾芭蕉の句で有名なのが”山寺”という愛称で親しまれている山形県の宝珠山立石寺。うっそうとした木々の中を続く1015段の石段を踏みしめながら、蝉しぐれを聞いて芭蕉の時代に思いをはせる参拝客は後を絶ちません。
そんな”山寺”を訪ねる参拝客に親しまれている食べ物が、山形名物の玉こんにゃくです。
蝉しぐれが降り注ぐ真夏の盛りでもおかまいなく、参道の出店の玉こんにゃくは熱々の湯気を立てて長い石段を登ろうとする参拝客の力を奮い立たせます。
一説によると、立石寺を開山した慈覚大師(円仁和尚)が中国から持ち帰ったこんにゃくを寺の精進料理に使いはじめ、こんにゃくが山形に広まったのだとか。
玉こんにゃくそのものは立石寺が起源ではないようですが、直径3センチ大の丸い醤油味の玉こんにゃくは今でも山形各地で親しまれています。
味つけはいさぎよく醤油のみ。
醤油のしみた表面は塩からくても、中心まで味がしみていないので、大きくかじるとちょうどよい塩梅です。
熱々の玉こんにゃくに練りがらしをつけて、思い切ってかじるのが一番。
滋味深く素朴な味わいと、山形の魅力におなかも心も満たされます。